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自由診療を受ける知人に何と言う? #教えて勝俣先生 第1回開催の様子をご紹介します

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こんにちは。取締役COOの二宮です。

オンラインがん相談サービスCancerWithでは、11月25日に初めてのTwitterスペース上でのトークイベントを開催。顧問の勝俣範之先生を迎え、リスナーからのご質問に答えるオンライントークを実施しました。約200人の方に同時視聴いただき、ハッシュタグ#教えて勝俣先生には多くのご質問やご感想が寄せられました。当日の内容を、一部抜粋してご紹介します。

「腫瘍内科医」って、どんな仕事をしているの?

二宮みさき(以下、二宮) まずは「腫瘍内科医」のお仕事の内容について教えてください。

二宮みさき
二宮みさき@chira_rhythm55
CancerWithを運営する株式会社ZINE 取締役COO
2015年に乳がんに罹患、現在もホルモン療法を継続中

勝俣範之(以下、勝俣) まだ一般的には知らない方が多いと思います。私はよく、「がんの総合内科医」と紹介しています。手術をしないがん専門医です。日本ではがんの専門医というと外科医をイメージされますが、海外ではオンコロジストと呼ばれる腫瘍内科医を指します。

腫瘍内科医は総合的に患者さんを診て、診断から抗がん剤、放射線、手術などの治療方法の選択、緩和ケアまで行います。必要があれば外科や放射線治療科、精神科など、さまざまな科への連携・紹介も行います。

ただ、日本ではまだまだ腫瘍内科医が少なく、全ての患者さんに対して対応できているわけではありません。がん診療は一つの科だけではなく、チーム医療が大事です。日本では腫瘍内科医は1,400人程度いますが、アメリカでは1万8,000人程。アメリカの方が約2.6倍人口が多いことを考えても、日本では全く足りない状況です。

勝俣範之
勝俣範之@Katsumata_Nori
日本医科大学 武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授、部長、外来化学療法室 室長
CancerWithを運営する株式会社ZINE 顧問

二宮 患者さんにとって、腫瘍内科医がいるメリットってなんでしょうか?

勝俣 内科医として総合的に患者さんを診ることができるので、患者さん第一の選択ができます。三大治療の手術・抗がん剤・放射線のメリットやデメリットを考え、どれを選択し、どう組み合わせるか、一人一人の患者さんに合わせた選択をできます。例えば、子宮頸がんのステージI、ステージIIでは、放射線・化学同時療法の予後が良いにもかかわらず、外科中心の環境では手術が選択されやすい、という実態があります。

治癒・寛解などの言葉の定義は?

勝俣「治癒」に関しては、 厳密には、医学的な定義は存在しません。データとしては「生存率」を出します。がんが再発しなければ「治る」と言えますが、何年経っても再発は完全にゼロにはなりません。そのため、定義が難しく、医学的には「長期生存」という言葉を使います。

がんの種類によっても異なり、多くは「5年生存率」や「10年生存率」という言葉を使います。例えば、乳がんは再発率が高いため、古くから10年生存率を出していますが、10年を過ぎても再発する方はいます。私の患者さんでは35年経って再発された方もいます。そういったことから、「治る」という定義は難しいかなと思っています。

「寛解」に関しては、現代では、医学的には「完全奏効」という表現をすることが多いです。昔は「完全寛解」という表現をしていたもので、現在では一部の血液がんでのみ使われる言葉です。

誤解を生みやすい「効果がある」という表現

勝俣 同じような言葉の定義のお話で、がんが小さくなる腫瘍縮小効果を「効果がある」と表現することがあります。患者さんに「2割程度の効果がありますよ」とだけ伝えてしまうと「2割は治ってしまう」と思ってしまいます。実際は、「がんが小さくなる効果が2割程度ある」ということです。

仁田坂淳史(以下、仁田坂) それは患者さんは勘違いしてしまいますよね。

仁田坂淳史
仁田坂淳史@nitasaka
CancerWithを運営する株式会社ZINE 代表取締役CEO
祖母の「がんが治る水をつくる機械」(80万円)購入や家族のがん罹患をきっかけにCancerWithを立ち上げ

再発した患者さんの藁をもすがる思い。患者さんを正しく導くための工夫は

勝俣 再発がんは、一般的には治すのが難しくなってきます。再発には大きく2種類あって、元のがんと同じ場所に出てくる局所再発と、遠隔転移再発の2つです。局所再発とは比較的まれに起こりますので、「再発」というと、一般的には、「遠隔転移再発」のことを言い、治療の難易度も上がってきます。

進行がんとは、遠隔転移のあるがんのことを言うので、再発がんは、進行がんと同じ状況になります。

がんに対して、ネットなどで、「こうすれば治りますよ」という表現をよく見かけますが、がんはそんなに簡単な病気ではないので、「こうすれば治りますよ」などと言っているサイトを見たら、医療者から見たら怪しいということはすぐにわかります。

しかし、がんになってしまうと、患者さんは冷静ではいられません。焦って怪しげな情報に手を出してしまう。例え医療者だとしても、そういった情報に手を出すことがあります。医療者も、自身の専門分野以外のことは素人レベルで、わからないことも多いのです。

大事なことは、ちゃんとした施設で働いている、ちゃんとした専門医なのかを見極めることです。

二宮 患者さんの視点では、藁をもすがる思いで信じたくなってしまう部分も共感します。どうしたら良いのでしょう。

勝俣 まず大事なことは、三つの「あ」を大事にすることです。

  • あせらない
  • あわてない
  • あきらめない

現在は患者さんも自身でインターネット上で情報を見つけやすくなったことから、怪しい医療が増えました。患者さんは弱い立場ですが、日本ではそういった弱い立場の患者さんを守れず、誤った情報・治療が垂れ流しになっているのは残念だなと思います。

自由診療を受けようとしている知人に何と説明するべき?

勝俣 日本の誇るべき医療は皆保険制度です。他の国に類をみない素晴らしい制度です。何が素晴らしいかといえば、患者さんにとって最善の治療である「標準治療」は全て保険適用になっています。北欧でも皆保険の国はありますが、日本ほど全ての最善の治療が保険適用の国はありません。それに加え、高額療養費制度もあります。患者さんを守る素晴らしい制度です。

良い治療薬があれば、必ず保険適用になります。十数年前は海外でのみ承認され、日本で承認されない治療薬がありました。しかし現在では、専門医から厚生労働省への提言により治療薬の承認が遅れること(ドラッグラグ)もなくなりました。

ですから患者さんに言えることは、良い治療は全て保険適用になっています。逆に言えば、「保険治療ではない治療は怪しい」と言えます。

正しい薬を作るための世界共通の「薬機法」

勝俣 正しい薬を使うために、薬機法という法律が定めらています。世界共通のルールGCP(Good Clinical Practice)を厚生労働省がまとめたもので1997年発表されました。その後は厳密な運用がされていて、効果がない薬は承認されなくなり、良い薬のみ承認されるようになりました。

民間医療を勧めてくる、家族や知人との付き合い方

勝俣 これは難しい話題です。がんになると、親戚や友だちなど周囲の人が急におせっかいになることがあります。人間関係の問題なので患者さんは無理に断ることも難しいとは思いますが、あまりにしつこい方がいたら「私はやりません」と率直に答えていただくのが一番良いですね。

仁田坂 祖父母から高額なお金を渡されて、「これであの治療を受けてください」と懇願される例もありますよね。

勝俣 そういった場合は、医療者に相談すると良いと思います。親兄弟の勧めは無下に断れないですよね。医療者から家族に伝えて断れば、角が立たなくて済みます。

正しいがん情報を広めるためには

勝俣 日本では、まだまだ怪しげな情報が多いです。私は怪しい情報を叩くだけではダメで、正しい情報を発信を続けることが大事だと思っています。国立がん研究センターの情報は正しくて良い情報ですが、わかりづらかったり難しい部分もあります。そのため、みんなが正しい情報を発信していくことで、それが世の中に広まっていくと思います。

民間の団体で、正しい情報を伝えられているところは、まだまだ少ないと思っています。それには、労力もかかるので。その中でもCancerWithは真面目に頑張っていると思うので、顧問として応援しています。

仁田坂 正しい情報、そしてわかりやすい情報を発信するのは本当に難しいですよね。でも、やらないと広まらないので、CancerWithは引き続き地道に頑張り続けようと思います。

#教えて勝俣先生 第2回を開催します!

12月23日(木)21:00から #教えて勝俣先生 第2回を開催します! 詳しくはCancerWithの公式Twitterアカウントをご確認ください。今回も皆さまからのたくさんのご質問をお待ちしています!

がんと診断され治療や生活でお悩みを抱えていらっしゃる方は、CancerWithをご利用ください。

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