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オンラインがん相談サービス CancerWith

がん治療・生活の不安を専門家(看護師、社労士、キャリアカウンセラー)に相談できます。

オンラインがん相談サービス「CancerWith」のアドバイザーってどんな人? Vol.4 産業カウンセラー・花木裕介さん

こんにちは。CancerWith認定アドバイザー・看護師の堀川です。
オンラインがん相談サービス「CancerWith」には、看護師、社労士、キャリアコンサルタント、産業カウンセラーなど、さまざまな職種のアドバイザーが在籍しています。専門職ごとのスキルはもちろん、人間味あふれる個性的な皆さんです。認定アドバイザー紹介Vol.4では、アドバイザー看護師の堀川が産業カウンセラー・花木裕介さんにお話を伺いました。

※取材はメールインタビューで実施しました

堀川明日香(以下、堀川):自己紹介をお願いします。

花木裕介(以下、花木):花木裕介、千葉県柏市在住、職業、肩書きは、一般社団法人がんチャレンジャー 代表理事/産業カウンセラー/両立支援コーディネーター/国家プロジェクト「がん対策推進企業アクション」におけるがんサバイバー認定講師/千葉県がん対策審議会専門委員。趣味はスポーツ観戦、温泉巡りです。

一般社団法人がんチャレンジャー代表理事/産業カウンセラー花木裕介さん

堀川:ありがとうございます。次に今までのご経歴を教えてください。

花木:2017年12月、38歳のとき、中咽頭がん告知を受け、標準治療(抗がん剤、放射線)を開始。翌8月に病巣が画像上消滅し、9月より復職。2021年2月、局所再発により標準治療(手術)を実施。現在は経過観察中。
がん判明後より、ブログ「38歳2児の父、まさかの中咽頭がんステージ4体験記!~がんチャレンジャーとしての日々~」を開始し、現在も執筆中。

ameblo.jp

2019年2月「青臭さのすすめ 〜未来の息子たちへの贈り物〜(はるかぜ書房)」を出版。

harukazeshobo.com

自身の闘病中の経験から「一般社団法人がんチャレンジャー」を立ち上げ

堀川:アドバイザーでありながらがんサバイバーでいらっしゃる花木さんですが、一般社団法人がんチャレンジャーはどんな思いで立ち上げたのですか?

花木:自分自身、治療中にさまざまな方からの支援をいただくことができました。一方で、少なくない方から、本意ではない言葉を投げかけられたこともあります。本人たちは善かれと思っての言葉が、時に罹患者を傷つけることもあるということを身をもって知ったことが、法人立ち上げのきっかけとなりました。なお、罹患前から今日に至るまで、平日昼間はサラリーマンとして民間会社に勤めており、一般社団法人は勤務先の許可を取り、主にライフワークとして取り組んでいます。

堀川:お仕事と法人活動をかけ持ちされているとのことですが、どのような使命感をお持ちですか?

花木:弊法人のミッションは、「がんという病気に挑戦する方や、がんに罹患しながらも人生の挑戦を諦めない方を後押しするため、『人が人に寄り添う社会づくり』に貢献していく」というものです。「がんサバイバー」という言葉がありますが、治療中、自分自身は、がんという病気に挑戦し、また、がんに罹患しながらも人生の挑戦を諦めない人間でありたいという思いから、勝手に「がんチャレンジャー」という造語を作り、名乗り始めました。そして2年後、今度は、そういう方々を後押ししたいという気持ちから、法人名も「がんチャレンジャー」にしました。

一般社団法人がんチャレンジャーの「キャンサーロスト」とは?

堀川:花木さんは「キャンサーロスト」の発信、リサーチなどの活動をされています。キャンサーロストについて教えてください。

花木:キャンサーロストとは、一般社団法人がんチャレンジャーが作った造語で「がん罹患によって失ったものや、がん罹患によって生まれた挫折」のことを指します。「がんによって得られたもの」を「キャンサーギフト」と呼ぶことはご存知かもしれません。その反対の意味と捉えていただければ分かりやすいでしょうか。
わざわざ造語を作るまでもなく、がん罹患には、喪失が付き物だと思われるかもしれません。しかし私たちがん罹患経験者の多くは、それらを簡単に受け入れられているわけではありません。ただでさえ健康が失われた上に、さらに人生のライフイベントや夢や目標なども失うのです。
私の知人の中でも、がん罹患によって出産の夢を絶たれた方や、仕事を奪われた方、念願だったマイホームを直前で断念せざるを得なかった方など、キャンサーロストに直面してきた方が多数いらっしゃいます。
若年性がん罹患世代(AYA世代)であれば、まだキャンサーロストとは言いきれないかもしれないものの、恋愛、進学、結婚、就職などで、大きなハンデを負うことも多分に想像されます。
ちなみに、一般社団法人がんチャレンジャーでまとめた『キャンサーロスト』に関するアンケート(実施:2022年4月13日~5月15日実施/取得方法:webによるアンケート/回答者:507名)

prtimes.jp

結果によると、79.2%の方が、「がん罹患によって、あなたにはこれまでにキャンサーロストといえるような喪失体験がありましたか?」という質問に対して「あった」と答えていることからも、多くのがん罹患経験者にとって「キャンサーロスト」は切っても切れないものであることがうかがい知れます。
なお、私自身のキャンサーロストは、今も勤めている勤務先で、目標にしていた管理職というキャリアが、がん罹患を機に、遠い存在になってしまったことです。
責任ある仕事をほとんど任せてもらえず、「人の管理をする前に、自分の健康管理をしっかりしないとね」と言われる状況が、復職後4年ほど続いています。

がんチャレンジャーを立ち上げた前後で感じる変化

堀川:ご自身、周囲の方々の経験からも、現在の活動に至るのですね。がんチャレンジャーの活動前と活動後でご自身や周りに変化を感じることはありますか?

花木:法人立ち上げの前は、産業カウンセラーの資格こそ持っていましたが、基本的には、いち罹患経験者として、治療経験などの体験談を求められることが多かったです。
一方、法人立ち上げ後は、体験談に加えて、団体の代表として、また専門家として、より客観的な意見も求められることが増えたように思います。
私自身は特に大きな心境の変化は感じていませんが、周囲の方の期待は、より大きくなったような気はしており、その部分は責任を強く感じています。

「キャンサーギフト」と「キャンサーロスト」の共存とは

堀川:「キャンサーギフトを手に入れなければいけない」プレッシャーを感じるというのは、医療者の私でも感じることがありますので、患者様はより強いものなのではないか、と感じております。「キャンサーギフト」と「キャンサーロスト」の共存させるのがよいのでは、というブログ記事を拝見しましたが、具体的にはどのようなイメージですか?

花木:人には報酬よりも損失のほうを大きく評価する心理的傾向があると言われており、場合によっては報酬よりも損失のほうが、2倍以上も大きく感じるようです。

これを「損失回避バイアス」と言い、人はとかく失ったものに対してのほうが印象を強く持ちがちです。それをがん罹患に当てはめると、やはり「キャンサーギフトよりも、キャンサーロストのほうがインパクトが強い」という仮説が成り立ちます。

堀川:発症直後や経過が浅い時期には「キャンサーロスト」が目について、「キャンサーロスト」と正面から向き合えるようになると「キャンサーギフト」が見えるようになるのかな、と個人的に感じましたが、このような認識であっていますか?

花木:私の場合は、キャンサーロストのショックが強すぎたため、キャンサーギフトを無理にでも見つけてバランスを取らなければやっていられないような状況でした。そのような状況でしたから、当然、罹患後 1〜2 年は、キャンサーロストときちんと向き合うこともできませんでしたし、キャンサーギフトに対して本当の意味で感謝などはできていませんでした。でも、今思えば、それは致し方ないのかもしれません。
これまで描いてきた将来や築き上げてきた現実が音を立てて崩れ去っていくわけですからね。その事実は、簡単には受け入れられるものではないでしょう。
私のように告知から数年経ってようやくキャンサーロストに向き合える方もいれば、告知後から向き合わざるを得ない方もいらっしゃるかと思います。
ただ時期はどうあれ、一度もしっかりと現実と向き合うことなく、本当の意味でのキャンサーギフトには気づけないのではないかと、経験上感じます。
そして、キャンサーギフトとキャンサーロストは対立(vs)させるのではなく、共存(&)させるのがいいのではないかなーというのが、今の私なりの答えです。

堀川:花木さんの今のお考えでは、時期でなく共存という考え方なのですね。わかりました。ありがとうございます。

花木さんの活動の夢、目標とは

堀川:花木さんの現在の活動の夢、目標を是非聞かせてください。

花木:罹患前は夢や目標を高く持つことが正しいと思っていましたが、自分自身、キャンサーロスト体験をしてからは、あえて高い目標を掲げないようになりました。目標と現在の自分自身とのギャップが埋まらないことが苦しいと思うようになったからです。一方で、日々、小さくてもいいので一歩踏み出すことだったり、一日大過なく過ごせたことに感謝をしたりすることに、重きを置くようになりました。そういう意味で、この活動もたとえ細くても、できるだけ長く続けていければと思っています。

堀川:CancerWithでの行いたいこと、メッセージをお願いします!

花木:キャンサーロストは、簡単に解決できる、乗り越えられることではありません。だからこそ、罹患経験者の皆様のキャンサーロスト体験にそっと寄り添えるような、そんな存在でありたいと思っています。皆様のお気持ちをぜひ聞かせていただけたら嬉しいです。

堀川:花木さん、ありがとうございました。とても参考になるご意見をいただき、私自身も患者様の「キャンサーロスト」について考えるきっかけとなりました。是非一緒にユーザー様に寄り添う存在になりたいと思います。


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